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5Gの次で待つ「6G」の世界とは?

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2022年2月の記事では、当時新しい移動通信規格である「5G」について、その特徴や今後広告やビジネスに与える影響についてご紹介しました。今や言葉としては一般的となった「5G」ですが、既に「5G」の次の通信規格の「6G」に関して様々な研究や取り組みが進んでいます。今回の記事ではこの「6G」についてご紹介します。

鈴木脩一

鈴木脩一

研究員/広報

調査概要


1 次世代の移動通信規格としての「6G」


1-1:6Gまでの進化


そもそも、「5G」や「6G」といった言葉は、携帯電話に代表される「移動通信規格」の進化を表す言葉です。「G」は「Generation(世代)」を意味し、5Gは「第五世代移動通信システム」、6Gは「第六世代移動通信システム」と呼ばれます。

1980年代に、車の中で電話する自動車電話やバッグのようなショルダーフォンから始まった「1G」はアナログの無線技術がベースです。その後90年代から00年代にかけて「2G」「3G」と進化し、デジタル化によって通話だけでなく様々なデータのやりとりが可能になりました。日本では「iモード」の登場によりインターネットを活用した様々なコンテンツを体験できるようになり、所謂「ガラケー」と呼ばれる携帯電話が普及しました。そしてスマートフォンの登場と併せて、SNSの活用や動画の視聴等の高速で大容量の通信が可能になったのが現在主流となった「4G」です。
このように振り返ると通信規格の進化はデバイスやサービスの進化を促すだけでなく、社会全体に大きな影響を与えてきたインフラと言えます。

1-2:5Gの特徴と現状


5Gの特徴は「高速大容量の通信」というこれまでの進化の延長線がまず挙げられます。一方で、遠隔地との通信等でも遅延が少ない「低遅延の通信」という質の向上や、同時に大量のユーザーのアクセスを可能にする「多数同時接続」も特徴です。

2020年3月から本格的に実用化・商用化された5Gは、総務省の統計では2022年3月末の時点で、全国の93%の人口カバー率(実際の人が住む生活範囲で利用できるかどうか)まで普及したと報告しました。今後も携帯電話の通信利用としてはもちろんですが、コロナ禍で広まったリモートワークの普及や医療や農業への活用にも期待されています。

2:「6G」によって訪れる未来


では、この5Gの次世代にあたる「6G」にはどのような特徴があるのでしょうか。

2-1: 次の社会のあり方「Society 5.0」を支える「6G」


日本国内では総務省が2020年に「Beyond 5G推進戦略 -6Gへのロードマップ-」を発表しました。この報告の中では2030年代に6Gの実現を目指す点がまとめられています。さらに新しい社会のあり方として想定される「Society 5.0」を支える中核として6Gが記載されました。


出典:内閣府ホームページ「Society 5.0」より引用 https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/

そもそもSociety 5.0とは元々内閣府が2016年の「第5期科学技術基本計画」で提唱した、次世代の社会のあり方です。この中では狩猟社会から始まった社会を「Society1.0」とした場合、現在の私達の社会は情報社会である「Society4.0」と定義しています。
この情報社会の次にあるべき社会のあり方として「Society5.0」は提言されました。そこでは『サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)』と定義されています。

現在、6Gに関しては各企業や地域で様々な研究が進められていますが「5G」の特徴であった「高層大容量の通信」「低遅延」「多数同時接続」を更に進化させることはもちろん、以下の4点が新しく可能になるとされています。

1) 自律性:AI(人工知能技術)等で自律的にユーザーに最適なネットワークを構築する
2) 拡張性:人工衛星等とのシームレスな連携で宇宙や海洋でもスムーズに通信
3) 安全・信頼性:セキュリティが常に確保され、災害や障害発生時にも耐えうる
4) 超低消費電力:増え続ける電力需要に対応するために低消費電力化を行う

通信の品質だけでなく、その信頼性や環境を配慮して持続可能な社会を目指す現在の社会の流れを踏まえた技術と言えます。


*令和2年総務省「Beyond5G推進戦略(概要)」をもとに作成

2-3:6Gで何が可能になるのか?



ではこの6Gでは具体的にどんなことが可能になるのでしょうか?

1)物理的な制約が解消される
例えば新しい移動手段として注目されている自動運転では常にセンサーで周りの状況を読み取りながら、公共の交通情報等をやりとりする必要があります。しかも、自動走行車自体も高速で移動するため、それを追尾できる安定した通信が必須です。人々が物理的な距離の移動の難しさや制約から開放され、どこでも働けて必要のない作業から開放されることで本質的な活動に集中することができます。

2)必要な情報やサービスが、最適に提供される

地域ごと、年齢ごとにもよって医療や経済活動等の社会的なニーズは大きく異なり、これら一つ一つに対応することは現在の大きな課題です。これらの課題を解決するためには人々の活動により蓄積された膨大なビッグデータの分析が必要になります。このビッグデータの処理にも情報の素早い伝達が可能な6Gが重要な役割を果たします。

これまで人々がPCやスマートフォンといった端末に入力することで情報を得ていましたが、6G以降にはAIが自動的に判別して最適な情報が必要な時に提供される社会が期待されます。

3)全ての人とモノが繋がり新たな価値が生まれる

6Gの実現によって現在注目されているメタバースのような仮想空間内でのコミュニケーションや、ARやMRといった体験がより一般的になることが期待されます。
また、デバイスを通しての視覚・聴覚の体験だけでなく、人間が持つスキルを共有する技術として研究されているのが「人間拡張技術」です。
この人間拡張技術は人の動きそのものをセンサーやデバイスが読みとって別の人がつけているデバイス上で再現します。
例えば現在ではピアニストが弾いた動作をそのまま伝達して他の人が同じ様に弾いたり、プロスポーツ選手のフォームを体験できたりする等の具体的な研究が進められています。


3:まとめ


今回は次世代の通信規格である6Gについてご紹介しました。
2030年という極めて近い将来での実現が見込まれていることや、AIやメタバースといったまさに現在私達が触れている技術や社会とかけ離れた未来では無いことが分かります。
AIを例に取ってみてもChatGPT等の生成系AIがこの数年で急激に進化していることからも、予想よりも早く6Gによる社会への変革がもたらされる可能性もあります。

ビジネスの現場でもVRを活用した各種イベントやライブ配信はもちろん、「コネクテッドコマース」というIOT技術を活用した一人ひとりに最適な購買促進も行われはじめています。
日々進歩する通信技術を遠い未来と考えず、常にキャッチアップしていくことが今後も求められそうです。

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