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セールステックはAIの普及でどう進化するか

DX推進

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以前の記事でも紹介したセールステックがAIの普及により、さらに進化を遂げようとしています。コロナ禍でオンライン会議やバーチャル展示会など、企業の営業活動におけるDXが十数年早まったと言われています。この営業活動のDX化に欠かせないものがセールステックと呼ばれる一連の技術です。今回はこのセールステックがAIで今後どのように進化していくかをご紹介したいと思います。


鈴木脩一

鈴木脩一

研究員/広報

調査概要



セールステックとは



セールステックは「営業」(Sales)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、2000年代から注目されてきたキーワードです。情報通信技術の発達により、それまでアナログ的・属人的だった営業活動の生産性の向上を図る技術やツール全般を指す言葉として広まりました。

先進国を中心とした少子高齢化に伴う労働人口の減少は各企業にとって課題の一つです。
さらにQOL(Quality Of Life)の浸透により労働時間に対する考え方も多様化し、限られた人数で業務効率化を図るセールステックへの年々需要は高まっていきました。スマートフォン等のデバイスの発展がセールステックの変化を促し、近年のコロナ禍による業務のデジタル化・オンライン化よりさらに拡大を続けています。

セールステックがカバーする分野は幅広く、顧客情報の管理を行うCRM(Customer Relationship Management)や見込み顧客へのアプローチを効率的に行うMA(Marketing Automation)ツールといった営業支援・顧客管理のものから、カスタマーサポート等の顧客対応を効率化させるものも含みます。

以前の記事ではセールステックそのものについて詳しく紹介していますので併せてご覧ください。

近年のAIの進化


2000年代に入り、AI(人工知能)は大きく進化しました。そこには様々な要因が挙げられますが、大きな要因として「機械学習」の実現が挙げられます。機械学習とは、私達人間が行う「学習」を、コンピューターが自動で行えるようにする技術です。これにより、様々なデータを記憶するだけでなく、規則性などを見出してアウトプットすることが可能になったことが近年のAIの特徴です。機械学習の結果や精度に関してはこれまで人間がその都度調整する必要がありました。しかし、ただ規則性を判断するだけでなくその情報の精査まで自動で行う「深層学習」(ディープラーニング)の進化によりさらにAIは様々な分野で活用されるようになりました。


セールステックはAIでどう変わるか


この「機械学習」や「深層学習」が発達したAIによりセールステックはどの様に変わっていくのでしょうか。

AIによるチャットボット(chatbot)の進化


セールステックで注目された技術の一つが「チャットボット」です。人間とチャットしているように自動でやりとりができるこのシステムは、カスタマーセンターやマニュアル等で人間が対応していた業務の代替として期待されていました。皆さんもECサイトや企業のサービスページの右下などによく「チャットでお答えします!」という小さなウィンドウを見かけることも増えたと思います。

しかし、これまでのチャットボットは事前に想定された質問に対して定型の答えを返すことしかできず、回答の精度や結果的に人間が対応せざるを得ない…といった問題もありました。

しかし、AIによる機械学習と連携させることで、人間の入力した様々な質問を分析してより精度の高い回答を導き出せるようになりました。さらに今話題の自然な言語を生成する生成系AIの「ChatGPT」と連携することで、より自然な文章での対応が可能です。


更に今後は「Alexa」や「Siri」に代表されるような音声認識による対応や、「バーチャルヒューマン」のように人間そっくりなアバターと組み合わせることでテキストだけでないカスタマーサポートも想定されます。

営業支援や顧客管理がAIによる「予想・提案」に進化


CRMやMAツールに代表されるセールステックもAIによる進化が期待される分野です。
元来これらのツールは膨大な顧客情報の管理・分析が主な目的です。どんな顧客が今どのようなステータスにいるのか、そして人間が行った営業活動の結果を収集・管理してデータの分析が容易になる機能が搭載されています。

ここに先程紹介した機械学習が行えるAIが連携することでデータの分析が効率化されることはもちろんですが、分析だけではなくAIによる「予想・提案」が可能になります。


具体的には「どの顧客にどのタイミングでどんなアプローチをすればいいのか?」という営業行為を行う上での最適解をAIが過去の成約率や市場傾向から分析して導き出すことが可能です。また、顧客へのメール配信やWebへの広告出稿を効率的に行うMAツールなどでもAIによって最適なタイミングとコンテンツを配信することもできます。常に膨大なデータと顧客情報を持つ保険会社や銀行等でAIを活用した営業活動が始まっており、業績へのインパクトが期待されています。

まとめ


いかがでしたでしょうか?
今回はAIによってセールステックがどう進化するかをご紹介しました。

記事でお伝えした点を改めてまとめさせていただきます。

・「機械学習」や「深層学習」により急速に進化、普及したAI技術

・ChatGPT等の生成系AIとも連動したチャットボットによりカスタマーサポートなどの業務が効率化する

・CRMやMAツールが「管理・分析」から「予測・提案」までを可能にして、属人的だった営業行動がさらに精度を上げながら効率化する

現在セールステック業界は一部の大企業だけでなく、中小ベンチャー企業によって業界や職種別に様々なサービスが生まれるなど、円熟期を迎えようとしています。その中でこのAIの進化はさらなる変化をもたらすことは間違いありません。
その際には単に最新のAIだから導入する…ということではなく、AIが持つ利点や特徴を正しく理解することが今後の営業活動のポイントです。


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