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建設現場の課題を解決『建設DX』とは?

DX推進生産性向上

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DXによるビジネスモデルの変革はこれまで紹介してきたサービス業・広告・コミュニケーション分野にはとどまりません。むしろ従来のビジネスモデルが行き詰まりを見せている業界にこそ求められています。その一つが建設業界です。

今回の記事ではこの建設現場のDXについてご紹介します。

鈴木脩一

鈴木脩一

研究員/広報

調査概要

建設DXとは何か?


建設DXは、一般的に建設業界におけるデジタル技術の導入と活用・そこからのビジネスモデル全体の変革を指しています。
国土交通省は2023年に発表した「インフラ分野のDXアクションプラン2」*1の中で、インフラ産業を支える建設業界のDXの重要性や今後必要となる取組を紹介しています。

引用:国土交通省 「インフラ分野のDXアクションプラン2」2023年8月

*1:https://www.mlit.go.jp/tec/content/001622902.pdf

建設DXの背景にある業界課題


このように行政からもDXが求められている背景には、建設業界が現在抱えている様々な課題があります。

人材不足


建設業界における最も深刻な課題の一つは、人材不足です。国土交通省と厚生労働省は令和6年度の概算要求の中で以下のように述べています。

『建設業の技能者のうち、60歳以上の割合が約4分の1を占める一方、29歳以下は全体の約12%となっています。このような中、建設業が引き続き「地域の守り手」として役割を果たしていくためには、将来の建設業を支える担い手の確保が急務となっております。』*2

この少子高齢化や給与水準の低さなどによる就労希望者の減少に加えて、建設自体の需要も増大しています。国土交通省が発表した『2022年度建設投資見通し』*3によると、2015年度から連続で民間・政府行政主導合わせた建設投資額は毎年右肩上がりに増え、特にインフラの再整備や高層マンション・ビル建設の増加で需要に対して人材が足りない状況です。

*2 https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo14_hh_000001_00173.html
*3 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001516234.pdf

労働時間の長さ


人材不足の影響は建設業に従事する人の労働時間へも影響を及ぼしています。総務省や厚生労働省の統計をみると減少傾向にはあるものの、依然として全産業の労働時間平均と比較すると大幅に上回り「働き方改革」の遅れが指摘されています。
人材の登用はもちろんですが、非効率的な業務の見直しや改善による生産性の向上が必要です。建設現場だけでなく、現場監督の進捗確認のようなコミュニケーションにかかる業務等様々な場面での改革が求められています。

建設現場におけるDXの事例


現在この建設現場の課題に対しては国が主導する働き手の確保や待遇面見直しに加えて、私達にも身近になったARなどを活用したアプローチも行われています。

AR(拡張現実)の活用


AR技術を活用することで、建設現場の作業者は現実の環境に正確な情報を重ねて表示できます。まだこれから着手する作業の見通しや、現在の作業が設計図どおりに進んでいるかどうかなどを精密に確認することができます。

これまでベテランの従業員の経験則や勘に頼って居た部分が、技術に置き換えられることによって現場の負担を減らすことができます。さらには経験が少ないメンバーも効率よく、正確な判断が下せることでスピードアップや安全性の確保も期待できます。

既に様々な現場での活用が進められており、施工前の鉄筋や足場の組み方・設置する重機や資材の置き場所確認などニーズに応じた様々なAR活用が進められています。

デジタルサイネージの導入


街中でも当たり前になってきたデジタルサイネージですが、建設現場においても情報を効果的に共有し、作業者の指示を簡素化するための強力なツールとなっています。作業者はリアルタイムで図面や指示を表示し、タスクを遂行できます。これにより、熟練労働者の不足を補うことが可能となり、生産性が向上します。

さらには大勢の従業員が関わる現場などでは日々変わるスケジュールや安全に関わる注意事項の通達に音と映像で分かりやすく、リアルタイムで配信・更新できるデジタルサイネージが注目されています。

まとめ


今回は建設業界におけるDXについてご紹介しました。ご紹介したARやサイネージを使った現状の生産性向上だけでなく、今後はAIやロボティクスを活用した全自動化によりさらなる改革が進められると期待されます。

一方で、建築物としての安全性がしっかりと担保できるかどうかはまだまだ人の手による作業や確認の部分も少なくありません。さらに、ネットワーク化が進むと、不正アクセスによる情報漏洩や改ざん、不正な操作などに対してのサイバーセキュリティ対策も必要です。

今後は安全性や安定性を担保しながらのDXが推進されることが期待されます。

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