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デジタルが医療現場を変える 「医療DX」とは何か?

DX推進DX用語

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様々な産業分野で進められているDXですが、私達の健康に関わる医療・ヘルスケア分野も例外ではありません。国内を見ると政府と厚生労働省を中心に「医療DX令和ビジョン2030」と題された、医療分野におけるDXが推進されています。現在、行政だけでなく大手医療関連企業から、新規参入のベンチャー企業までが取り組んでいることも特徴です。

今回の記事ではこの医療DXについてご紹介します。

調査概要

医療DXの定義


厚生労働省に設置されている「医療DX令和ビジョン2030」推進チームでは医療DXを以下のように定義しています

「保健・医療・介護の各段階(中略)において発生する情報やデータを、全体最適された基盤を通して(中略)、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えること」*1

具体的には診療・診察作業から事務手続き、さらに研究開発の分野でデジタル活用を進め、最適な医療を患者に届けることが医療DXとして挙げられています。

*1: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/000992373.pdf

医療DXが求められている理由


医療DXが求められる理由は様々な要因が挙げられます。

高齢化による医療ニーズの増加


日本に限らず多くの先進国では、総人口に占める高齢者の割合が増加しています。この高齢化に伴い、慢性的な疾患や健康問題へのケアに対する需要が年々増加している状況です。
需要が増える一方、少子化や労働環境等が原因となり医療従事者は減少傾向にあることで医療体制が間に合わなくなる「医療崩壊」も懸念されています。
そこから、各種業務を効率化することで医療への需要に応えることも、医療DXが求められる理由の一つと言えます。

医療コストの削減


増え続ける医療コストへの対策としても医療DXは重要です。
前述の高齢化に伴う医療へのニーズ増加、それに対応するための設備投資や人件費の増大が自治体や医療機関では懸念されています。
業務を効率的に行うことで人件費を最適化させ、さらには医療情報や最新技術に関するデータをリアルタイムで研究者と共有し技術開発に関わる時間的なコストも抑えます。

医療情報の提供


先程も伝えた通り、高齢化社会において医療ニーズを適正化するためには、人々が健康を維持ながら年齢を重ねる「健康寿命」の延伸が重要です。健康な状態の市民が増えることで、医療へのニーズが最小限に抑えられ必要な医療体制の維持に大きく貢献します。
そのためには一人ひとりの取り組みも重要ですが、健康維持や予防接種等の予防医療に関する情報を患者側が容易にアクセスできることも重要です。高齢者を含めた様々な世代へ情報提供を遅延なく行うことも医療DXに期待されている分野です。

医療DXの事例


医療DXの具体的な事例をいくつかご紹介します。

電子カルテとピクトグラムを連動した「医療看護支援ピクトグラム」


現在、多くの病院や医療機関が医療DXの一環として患者の状態をデジタル化した電子カルテを導入しています。電子カルテにより、これまでの紙ベースで管理されていた患者情報が容易に共有できるようになり、治療の迅速化と品質向上が実現しました。



さらに、この電子カルテと連動してリアルタイムに患者の情報や必要な対応を誰にでも分かりやすいピクトグラムで知らせる「医療看護支援ピクトグラム」も注目されています。患者の情報に関する共有の時間を最小限に抑えるだけでなく、全ての職員が分かりやすく注意点を把握することで質の高いケアの提供に繋がります。

ヘルスケアアプリを活用した健康情報の提供


健康を管理しながら様々な医療情報にアクセスする手段をとして注目されているのが、スマートフォンを活用した「ヘルスケアアプリ」です。ヘルスケアアプリは、一般的にユーザーの健康に関する情報をアプリ上で管理分析することで、健康維持の為の情報提供等を行うアプリを指します。厚生労働省も2019年にはこのヘルスケアアプリを含めたITサービスへの投資活性化を訴えています。*2

食事の管理や睡眠の管理など、ニーズに応じた様々な種類のアプリがありますが、近年では企業の福利厚生の一環として従業員の健康面をサポートするヘルスケアアプリも注目されています。



企業が実施する健康診断やストレスチェック過重労働に関するサポートに加えて、従業員一人ひとりに対する産業医の面談や保健指導もヘルスケアアプリで一元管理できます。
従業員の健康管理は、従業員の満足度の向上や事業の継続性を高めることから「健康経営」という言葉で経営層・マネジメント層からも注目されています。

*2:https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000546638.pdf

まとめ


いかがでしたでしょうか?今回は医療DXについてご紹介しました。
近年では新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、日本の医療体制について関心が高まりました。特に、医療従事者の労働環境の改善の必要性が明るみになったとも言えます。今後は自治体だけでなく各医療機関や企業において医療DXに対する取り組みが進むことが期待されます。

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