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広告業界のAI活用事例

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2023年の世界的なホットワードの一つが、AI(人工知能)です。
特にChatGPTに代表される生成系AIは様々な業界でその活用が進められています。
特に質問をするだけで自然な文章で回答する言語生成AIのChatGPTや、プロンプトと呼ばれる命令文を入力するだけで画像を生成する画像生成AIはデザインやコピーライティング・プランニングといった広告制作への活用が期待されています。今回の記事では主にこの広告業界におけるAI活用の事例についてご紹介します。

鈴木脩一

鈴木脩一

研究員/広報

調査概要



クリエイティブへのAI活用例


広告業界では様々なAIの活用事例がありますが、2023年に入ってからは広告クリエイティブそのものに多数活用されています。その代表的な事例をご紹介します。

ChatGPTを活用したCMプランの作成:サントリー「やさしい麦茶」




サントリー食品インターナショナル株式会社(以下サントリー)は人気商品である「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶」の新CMのプランを文章生成AIのChatGPTで制作したことで話題になりました。このCMはChatGPTの中に架空の宣伝部長である「AI部長」を設定して、出演者のキャスティングからCMのシナリオまでサントリー社員と対話しながら決定したものです。社員と「AI部長」の対話の様子はTwitter上でも展開されました。


ChatGPTが考えたという話題性と、通常のCMでは見られない奇抜な演出が話題となりWeb CMメインであるにも関わらず大きな話題を呼びました。

ポイントとしてはあくまでChatGPTが考える奇抜な発想やそれを実現してしまう面白み自体を広告のアテンションとしている点です。(プレスリリースにおいても「本CMはChatGPTを活用したCMであり、AI領域への本格参入を示すものではありません」という注釈が付けられています。)

画像生成AIとブレストしてビジュアル制作:大日本除虫菊「キンチョー」


殺虫剤の「キンチョール」で知られる大日本除虫菊が2023年の4月に公開したCMは、そのキービジュアル作成に画像生成AIが活用されています。


画像生成AIでは「プロンプト」と呼ばれる命令文を入力して画像を出力することが一般的です。今回のCMではスタッフがイメージに合う画像が出力されるようにプロンプトを入力し続けることで、言わばAIと「ブレスト」をする形で制作されました。
最終的には出力されたビジュアルをベースに人間のスタッフがCGや実写と組み合わせることで、AIの独自性と人間の創造性がコラボした事例と言えます。

画像生成AIで広告のモデルを制作:近畿大学


画像生成AIで広告内に登場するモデルを制作したのが2023年1月に展開された近畿大学の広告です。


受験生向けに展開されたこの広告は「近畿大学のイメージ」について言及しています。そこで、近畿大学に在籍する学生の画像200枚をAIに学習させたうえでそこから特徴を抽出した「イメージされる近畿大学生」の画像を出力しました。学習した内容を元に画像を作る画像生成AIの特徴と広告メッセージを効果的にリンクさせた例と言えます。

デジタル広告の制作・運用フローへの活用


直接的なビジュアル表現の活用以外にも制作フローの効率化としてもAIの活用が進められています。

デジタル広告大手の株式会社サイバーエージェントはデジタル広告の作成支援システム「極予測AI」に、自社開発の言語モデルとChatGPTを組み合わせたコピー作成機能を追加したことを2023年5月に発表しました。
バナー等のデジタル広告の効果を予測したうえで配信していた従来のシステムに、広告内のキャッチコピー等文章の自動生成機能を追加したものです。自動でのコピー制作から効果予測、そして配信後の結果を受けてさらに最適な広告を作成するサイクルを実現したことで、工数の削減と広告効果のさらなる向上が期待されています。

サイバーエージェント以外にも電通グループ、博報堂DYグループ等の大手広告代理店でも同様の取り組みが主にデジタル広告の分野で進められており、今後標準的なフローとして確立されることが予想されます。

販促への活用:ECサイトで生成系AIによる「バーチャル試着」


ECサイト上での販促方法として生成AIの活用も進められています。
2023年6月にGoogleが自社サービスの「Googleショッピング」で生成AIを採用したバーチャル試着機能『Virtual try-on』を発表しました(アメリカのみ)。
この機能は自分と似た体型のモデルを選択すると、検討している服をそのモデルに着させて自分が着た時に近いイメージを見ることができます。このバーチャル試着により、ユーザーは自分により最適な商品を見つけることができるだけでなく、返品などのリスクを軽減して販売側と顧客の双方へのメリットが期待されています。


まとめ


いかがでしたでしょうか?
今回は広告業界におけるAIの活用事例についてご紹介しました。

今回主に取り上げた生成系AIに関しては、その学習方法や権利問題に対してのリスクも少なからず指摘されているのが現状です。今後は法整備や業界ごとのガイドラインが協議されることで、広告の発信側と受け手側の双方にメリットを生む技術に進歩していくことが期待されます。


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